からまっていた糸を、 少しずつ少しずつ、ほどいていく。 端と端を探しながら、 もう二度と、途切れることのないように。 鮮やかな橙の色と、 ほんの少しの秋の香り。
咲かないハスの花。 横たわったまま、少しずつ乾いていく。 枯れているのともちがう、 朽ちているのともちがう、 美しい姿。
立秋を過ぎてもまだまだ暑くて、 相変わらず下調べもせずに出かけるから、 思わぬ場所にたどり着いたり、 思いがけないことに出会えたりして、 迷うことは、やっぱり楽しい。 何も決めないこと、 時間を忘れること、 自由でいること。 なんでもないことなのに、 難しいことのようにも思えたり。 白い三日月を目印に、ただただ走った道の先。
ピンク色、青緑、濃い緑、薄い水色。 紫陽花の色、色々。 大きい丸、小さな丸、 少し歪んだ楕円のカタチ。 作る手が違うと、 生まれるものも違ってくる。 答えのないモノを作ること、 新しい発想に出会えること、 そんなことが楽しくて、 今もこんなふうに過ごしている。 始まりの輪と、終わらない輪。 繋がっていること、 続いていくこと。 もしも明日雨が降ったら、一人静かに手紙を書こう。
その声は、元気だけど、元気じゃない。 大丈夫だけど、大丈夫じゃない。 笑っていても、笑っていない。 たった一人でいい。 この世の中に、たった一人、 心から信じられる人がいれば、 それだけで幸せ、って言えると思う。
お隣りのさるすべりの花を眺めていたら、 ちょうど剪定をするところだからと、切って分けてくださった。 色のなかったアトリエに、眩しいくらいのピンク色。 日差しの眩しさに、 ちょっと疲れていたけれど、 焼けた肌は、ちょっとひりひりするけれど、 色鮮やかな紅色に、少しの元気をもらった日。 さるすべり公園の百日紅は、 もう咲いているのかな。 あの日の百日紅の木の、咲いていない花のこと。
小さな壁の穴が、少し気になるけれど、 糸のほつれも、少し気になるけれど、 お庭の草は、大いに気になるけれど、 きっと今日も見ないふり。 川緑の蔓は、ぐんぐん伸びて、 多分どこかに巻きついて生きるし、 青いちょうちょは、 空に負けない青さで、色鮮やかに舞っている。 何も語ろうとしない木と、 方法を知らない人。 書き留めておかなければ、きっといつかは忘れてしまう、 ほんの些細な日々の一片。
心に蓋をしないで、 生きてみてもいいのかな。
知らないことが多すぎる。 そう彼は歌う。 鹿子木楓の実。 エゴノキの虫こぶ。 青い紫陽花の魔よけの話。 遠い町に住む友人の今。 月の女神のこと。 突然の涙の意味。 君の横顔。 もしかしたら、知らなくてもいいこと。 世の中には、知らないことが溢れている。
暑い毎日が続くから、 なんとなく初心に戻って、シンプルなリース作り。 苦手な夏に向かう時、 必ずやって来るぼんやりとした感覚。 無駄に過ごしているような時間にも、 必ず意味はあるはずだから。 暑さに立ち枯れている紫陽花を見ながら、 そんなことを思ったり。
鈴柴胡、 小豆梨、 蔓人参、 鬼胡桃、 矢車草、 千島半鐘蔓、 長芋、 山桜、 瑠璃柳、 山の苗、色々。
その木は、残酷なまでに黙っている。 あの日の出来事を、まるであざ笑うかのように。 景色は平行で、心はアシンメトリー。 泣きたいのか、笑いたいのか、わからないから唄ってみる。 空を見上げるのを忘れていて、 なんとなく途方に暮れる。 さもなければ、夕焼けがこんなに美しいはずはない。 この言葉に出会えてよかった。 必要な言葉は、必要な時にやって来る。 だから、やっぱり空を見よう。
長いまつ毛の美しい人。 慎ましやかに、楚々と、 ただそこに、存在している。 優しさも、聡明さも、おおらかさも、 その全てを静かに纏いながら。
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